日本の「食」 西健一郎・西音松
現代を代表する日本料理人、西健一郎。
その父は伝説の京料理人、西音松。
若い頃は父親のもとで働くこともなく、
言葉を交わしたことさえ、ほとんどなかったという。
その健一郎が、父に教えを請うたのは
自分の店が各界の著名人が集う人気店になってから。
このままでは先に進めない。そう自覚した健一郎は、
引退していた父に土下座をして頼みこみ、
86歳で父が亡くなるまで、10年以上修業し続けた。
口数の少ない父親の作業をじっと見て、
その料理哲学を学びとる日々。
父、音松はよく独りごとのように
核心をつく言葉を言ったという。
「これでいいちゅうのはひとつもない。それを言うのは死ぬ時や」
あまたの食通をうならせる健一郎の料理には、
一生学びをやめない料理人魂が生きている。