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蛭田瑞穂 14年12月7日放送

141207-08

贈り物⑧ シャウプ司令官

1955年、アメリカの百貨店シアーズは
「サンタクロースに電話をしよう」という広告を配布し、
サンタへの直通ダイヤルを案内した。

ところが、その番号に印刷ミスがあった。
子供たちが電話をかけると、
中央防衛航空司令部のシャウプ司令官につながってしまうのだ。

小さな子どもからの間違い電話に、
司令官は腹をたてるどころか
「レーダーで調べた結果、サンタクロースは
北極から南極へ移動中です」と答えた。

以来、防衛司令部は毎年クリスマスに
サンタクロースを追跡し、
その足跡を公開している。

シャウプ司令官の機転を利かせた対応は、
子どもたちへの予想外の贈り物となった。

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蛭田瑞穂 14年11月9日放送

141109-07

お風呂⑦ 太宰治

昭和十四年、結婚したばかりの太宰治は
甲府の郊外に新居を借りた。

午後三時まで自宅で仕事をした後、
ほぼ毎日のように近所の共同浴場に通った。
風呂の後には湯豆腐を肴に地酒を飲むのが、
何よりも楽しみだったという。

 これまでの生涯を追想して、
 幽かにでも休養のゆとりを感じた一時期。

甲府での日々を太宰は後にそう回顧している。

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蛭田瑞穂 14年11月9日放送

141109-08

お風呂⑧ 川端康成

 私は高等学校の寮生活が、
 一、二年の間はひどく嫌だつた。(中略)
 私の幼年時代が残した精神の疾患ばかりが気になつて、
 自分を憐れむ念と自分を厭ふ念とに堪へられなかつた。
 それで伊豆へ行つた。

旧制一高の学生だった川端康成は精神の静養のため伊豆へ旅に出る。
旅の途中、湯ヶ島温泉での旅の踊子との出会いが、
後に小説『伊豆の踊子』誕生のきっかけとなるのは有名な話だ。

心が晴れない時は、温泉に行ってみよう。
日常とはちがう世界がそこにはある。

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蛭田瑞穂 14年10月19日放送

141019-07
djwtwo
あの人の酒⑦ 秋刀魚の味

小津安二郎の映画「秋刀魚の味」。

映画のラスト、行きつけのバーに
ひとりで訪れた笠智衆はウイスキーを注文する。
「水割りにしますか?」と尋ねる店のママに
「いや、そのままでいい」。

それは娘の結婚式を見届けた夜だった。

 「今日はどちらのお帰り?お葬式ですか?」
 「うん、まあ、そんなもんだよ」

ウイスキーには飲む人の人生が溶け込む。
それがウイスキーの味をいっそう深くする。

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蛭田瑞穂 14年10月19日放送

141019-08

あの人の酒⑧ 八十日間世界一周

1956年に公開されたアメリカ映画
「八十日間世界一周」にこんな場面がある。

ロンドンの会員制クラブで朝刊を読む紳士の元に
スコッチウイスキーと氷が運ばれる。

グラスをテーブルに置き、「氷は?」と尋ねる給仕。
紳士は答える。
「氷?氷はけっこう。私は白熊かね?」

生粋の英国紳士はウイスキーを
ストレート以外で飲まない。
それは流儀である。流儀は法律より重たい。

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蛭田瑞穂 14年9月14日放送

140914-07

夜空を見る人⑦ライカ犬

史上初めて宇宙を旅することになった飛行士は
ライカという名の小さな雌の犬だった。

1957年、ライカを乗せたソ連の宇宙船
スプートニク2号は地球を周回し、
生物を宇宙に送るという史上初のミッションを成功させた。

だが、スプートニク2号は片道飛行の宇宙船だった。
機体はやがて大気圏に再突入し、瞬く間に燃え尽きた。

現在、ロシアにあるライカの記念碑には
こんな言葉が刻まれている。

 ライカは知らない。その命の功績を。
 彼女は地球を出て、永遠の星となった。

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蛭田瑞穂 14年9月14日放送

140914-08

夜空を見る人⑧フリーマン・ダイソン

夜空を見上げると、そこには無数の星が存在する。
無数の星が存在しながら、ひとつとして同じ星はない。
宇宙はなぜこれほど多様なのか。
いったい誰がこの多様さをつくりだしたのか。

この世界の多様性について、
理論物理学者フリーマン・ダイソン教授はこう話す。

 多様性は生命が我々にもたらした大きな贈り物です。
 地球が美しいのも多様性のおかげであり、
 多様性を守り育てることは宇宙の大きな目標なのです。

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蛭田瑞穂 14年8月9日放送

140809-03
Jimmy Walker
走る③ 村上春樹

作家村上春樹には旅先におけるひとつの習慣がある。
それは走ること。

ローマ、ハンブルグ、ホノルル、ボストン、ミコノス島。
ランニングウェアに着替え、ジョギングシューズを履き、
行く先々の町を彼は走る。

村上春樹は言う。

 旅に出て、その町を走るのは楽しい。
 時速10キロ前後というのは風景を見るには
 理想的な速度だろうと僕は思う。
 それぞれの町にはそれぞれの空気があり、
 それぞれの走り心地がある。
 僕はそういう町の表情を眺めながら
 のんびりと走るのが好きなのだ。

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蛭田瑞穂 14年7月20日放送

140720-07
KoFahu meets the Mitropa
それぞれの人生⑦ アラン・レネ

今年3月に亡くなったフランスの映画監督アラン・レネ。

亡くなるひと月前に開催されたベルリン映画祭で、
アラン・レネはアルフレッド・バウアー賞を受賞した。
通常は若手監督に贈られるこの賞が
91歳の巨匠監督に贈られるのは稀である。

戦争を扱ったドキュメンタリー映画でデビューし、
しだいに政治ドラマ、恋愛心理劇、ミュージカルと
作家としての幅を広げていったアラン・レネ。

 常にイノベーティブで新しい境地を開拓している。

賞の選考理由が彼の生涯を物語る。

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蛭田瑞穂 14年7月20日放送

140720-081
pierre pouliquin
それぞれの人生⑧ ガルシア・マルケス

世界的ベストセラー『百年の孤独』の作者として知られる
ガブリエル・ガルシア・マルケス。
今年の4月、87歳でこの世を去った。

『百年の孤独』にはこんなエピソードがある。

『百年の孤独』を書き上げた時、彼はまだ売れない作家。
原稿の束を出版社に郵送しようとしたところ、
重量がありすぎて郵送代が払えなかった。
そこでマルケスは原稿をふたつに分け、半分をまず出版社に送った。
しかし、あとになり、郵送したのは
後半の半分だったことに気づいたという。

現在では40以上の言語に翻訳され、世界中で愛される『百年の孤独』。
作者の亡き後も永く読み継がれるにちがいない。

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