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野村隆文 20年5月24日放送



窓を開けよう 窓辺の人

善も悪も、ようするに人間の内にあるもの
すべてを引き出して際立たせるのが
窓なのである。

都市や建物を研究する建築史家であり、
建築家としても活躍する藤森照信はそう言った。

窓辺に立った人には、額縁に入ったように、
安定感と、格別な気配が生まれるという。

想像するのは、映画のワンシーン。
ラブロマンスでは、窓辺で恋人に想いを馳せ、
サスペンスでは、窓越しに異変がないか目を光らせる。
コメディは、たいてい窓を突き破るし、
ファンタジーは、窓から未知への旅に出る。

窓辺は人の本質を引き出し、
想像力をかき立ててくれるのだ。

家から出られない日曜日。
たまには窓辺に椅子を置いたりして、ゆっくり過ごしてみれば、
あたらしい考えや、今まで知らなかった自分が見つかるかもしれない。

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野村隆文 20年5月24日放送


Colt International Limited
窓を開けよう 窓は生命である

イタリアの建築家でありデザイナー、ジオ・ポンティは、
窓は生命であり内部でもある、と言った。

ピラミッドや塚といった、
幾何学に基づく古代建築の、現代の建築との違いは、
窓がないこと。
それもそのはず、墓では誰も会わないからだ。

一方で、マシンランドスケープと呼ばれる、
巨大なデータセンターや、物流倉庫がある。
現代の生活の象徴とも言える人間不在の建築には、
当たり前のように、窓はない。

窓は、
その内部で生活する人々のためのものであり、
そこに人が生きている証拠でもある。

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野村隆文 20年5月24日放送



窓を開けよう 心地よい窓辺へ

窓辺を提示すること。
荒れ狂う世界に対して、建築ができることはこれしかない。

力強い言葉でそう語ったのは、
新しい銀座線渋谷駅の設計も手掛けた建築家、内藤廣。

アルヴァ・アアルトの名建築 マイレア邸に感銘を受けた内藤は、
その窓辺は、大きな安堵感と、人の尊厳を支える場所だと述べる。

人にとって居場所があることは、不安定で混乱した外の世界に対する
心のシェルターとしての役割も大きい。
そもそも、建築は風雨から身体を守るものとして発展したもの。
あらゆる窓辺や建築は、人間が自由に守られるために存在するのだ。

人の居場所が、あらためて考え直されている今。

自分の家に、好きな街のどこかに、あるいは
遠く離れた国や、バーチャルな空間のなかに、
それぞれの人にとって居心地のいい、
とっておきの窓辺が見つかりますように。

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野村隆文 20年1月25日放送


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サマセット・モームの秘密

今から150年ほど前のこと。
パリのシャンゼリゼに、「美女と野獣」と噂された夫婦がいた。

大使館の顧問弁護士をつとめる教養人の夫と、
名家の出身で、たいそう美人な妻。
パリの社交界でも花形だったその夫婦に、1874年の今日、
六人兄弟の末っ子が生まれた。

少年の名は、サマセット・モーム。
のちに「月と六ペンス」を執筆し、
世界的なベストセラーとなる。

 思い煩うことはない。人生に意味はないのだ。

と語った大作家の、数奇な人生がはじまった。

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野村隆文 20年1月25日放送



サマセット・モームの秘密

サマセット・モーム。
数々のベストセラーを生んだ大作家には、
実は裏の顔があった。

語学が堪能で、旅行好きだったモームは、
あのジェームズ・ボンドと同じイギリスのスパイ機関
MI6に所属していた。
コードネームは“サマーヴィル”。

1917年には、革命の渦中であるロシアにも潜入。
後にその経験を下敷きに、
スパイ小説の古典『アシェンデン』も執筆している。

 矛盾だらけのさまざまな性質を
 束ねたものが人間だ

激動の時代に作家をつづけていくための、
一級の処世術だったのかもしれない。

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野村隆文 20年1月25日放送



サマセット・モームの秘密

イギリス人作家、サマセット・モームは、
旅行好きで有名。
ここ日本にも、生涯で4度訪れている。

「日本を題材に、なにか書くつもりは?」という質問には、
「わたしはもう死火山ですよ。フジヤマのようにね」と答えたが
実は、神戸を舞台に短編を残している。
その内容はなんと、人がときに見せる矛盾した一面について。

サマセット・モームの名言がある。

 ユーモアのセンスを持っていると、
 人間性の矛盾を楽しむようになる。

大作家は、自分の矛盾した一面さえも
楽しんでいたようだ。

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野村隆文 20年1月25日放送



サマセット・モームの秘密

 自分の四分の三は正常で、四分の一だけが変だと
 言い聞かせようとしていた。
 でも、実際の割合はあべこべだった。

作家のサマセット・モームは、
晩年、甥に向かってそう語ったという。

モームが生きた時代のイギリスでは、
同性愛は違法だった。
彼が二十一歳のときにも、
オスカー・ワイルドが投獄され、衝撃を与えている。

生前、公言は避けてきたモームだったが、
実はジェラルド・ハクストンというアメリカ人のハンサム・ボーイと、
繰り返し長旅に出ている。

社交家のハクストンは、
内気だったモームと、旅先で出会った人々の橋渡しをしたり、
真っ先に原稿を読んでアドバイスしたりと、
晩年までパートナーとして寄り添いつづけた。

いまや、同性愛への認識は、
世界中で大きく変わりつつあるが、
その裏側には、知られざる物語がある。

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野村隆文 20年1月25日放送



サマセット・モームの秘密

イギリス人作家、サマセット・モーム。

波乱万丈の人生を送り、
「人生に意味はない」と語った作家は、
91歳で没する、その晩年まで筆をとりつづけた。

彼の代表作は、「月と六ペンス」。
月は、幻想的な美。
六ペンスは、安っぽい日常のことを表しているという。

天才と凡人。善人と悪人を、公平に描きあげる。
そして、一人の人間のなかにも、矛盾があることを暴く。

矛盾した人間に呆れ、
先の読めない人生に諦めを覚えながら、
それでもそれをそのまま書き上げることで、
彼は人間を信じようとしたのかもしれない。

今日は、サマセット・モームの誕生日。

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野村隆文 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜マラソンと靴〜

世界最古のマラソンランナー、古代ギリシャのフィディピデスは、
マラトンからアテネまでの約40kmを、36時間かけて走破した。
このとき彼は、裸足だった。

日本人として、初めてオリンピックの舞台を走った金栗四三。
彼が代表選考レースで世界記録を更新したとき、履いていたのは
特製の「マラソン足袋」だったという。

その後、通気性の高いメッシュ素材が生まれ、
衝撃を吸収するソールの開発されていく。
マラソンの記録更新は、常に靴の進化が支えてきた。

2017年には、今までにない厚底のランニングシューズを履いた選手が、
日本記録を16年ぶりに更新。

2019年現在、マラソンの世界記録は2時間1分39秒。
2020年には、どんな靴を履いた選手が、
世界を沸かせてくれるのだろうか。

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野村隆文 19年9月15日放送


ResonantFelicity
未知なるメキシコ いろいろなタコス

メキシコの国民食といえば、
トルティーヤに様々な具を包んで食べる、タコス。

しかし実は、タコスはタコスだけにあらず。
タコという言葉には「円柱形のもの」という意味がある。
スポーツシューズのスパイクのことも、同じようにタコスと呼ぶそうだ。

こんなジョークもある。
「なぜメキシコ人はビリヤードができないのか?」
「タコを平らげてしまうからさ」

この「タコ」は、ビリヤードの玉を突くための細長い棒、
キューのことを意味している。
タコスもビリヤードも大好きな、メキシコらしいジョークを学べば、
あなたも立派なメキシカンに一歩近づけるかもしれない。

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