まにあうだろうか
ストーリー 一倉宏
出演 一倉宏+村上ゆき
いつも おなじような夢をみる
なにかに まにあわない夢だ
正確にいうなら まにあわないかもしれない あせりの夢だ
それは 入学試験だったり 卒論の締め切りだったり
あるいは 面接の会場に 成田発の飛行機に だったりする
それだけじゃない いつも私の 夢の時計は
たいせつななにかに向かって 進もうとしながら
どうでもいいようなエピソードに 巻き込まれ
とりかえしのつかない道草に 呑み込まれてゆく
「まにあわないかもしれない こんなことしていたら…」
すでに人生のなかばを過ぎた私に
学校の成績も 面接も就職も すでに結果の出ている過去
いまさら 将来を決めるような試験を受けることもない
なのに なぜ 私はあせって もがき続けるのだろう
くりかえす 夢の中で
朝 目覚めれば とっくに学校も卒業して
ちゃんと仕事もしている その自分に ほっとする
しかし 夢のあわいはまだ残る
ほっとする といっても 透明にはなれない
それは幸福でも 気分爽快でもない
ただ とりあえず とりあえず胸をなでおろすだけ
こうしてきょうも 時間どおりに起きられた自分に
なんとか ちゃんとやっている自分に
そして私は この現実の 時計を思う
いったい 私は まにあうのだろうか この人生の
このさきにある たいせつな たいせつな
その なにかに
「まにあうだろうか」一倉宏+村上ゆき
20130214バレンタインの昼休み、一倉宏ブログつながりで、このストーリーに出会った。同じ年代、きっと同じ感覚かもしれない、まさに私もそのとおり、と思った。すくわれた。ふっと息が抜けた。間に合わないかもしれない、人生になんとか帳尻を合わせたいという想いがそうさせるのかもしれない。