4の回。
数字の4は、鏡の前に立つのが好きではない。
数字の32にだんだん似ていく自分を見たくないのだ。
鏡のなかの4は一見数字の4なのだが、かたむける顔の角度によっては、
32の面影がうっすらとではあるがさす瞬間があり、
その加減が日に日に強まっているような気がするのである。
32÷8。
この計算の結果産まれたのが、この、4である。
だから、32に似ていたとしてもなんの不思議はない。
むしろ当然のことだし、4も32と8には心から感謝している。
ふたりがきっちり割り切れたおかげで、
余りもない小数点もない身軽な生き方をこれまでしてこれたのだから。
それでも、それとは別の割り切れない思いを、
4は4なりにずっと持ち続けてきたのも事実だ。
どうして、あの場面で、32と8は、
割り算ではなく掛け算をしてくれなかったのだろうか。
そうすれば、4ではなく、
256というジゴロな生き方もできたはずなのに、
と思わずにはいられないのだ。
出演者情報:高田聖子 03-5361-3931 ヴィレッヂ