勝浦雅彦のリメンバーカンヌ⑥ グラグラするもの、しないもの。

 ・カンヌセミナーのひとつ。TBWAのオリンピックセミナー。端にいる女性は、あのコマネチさんです。

お盆も終わり、このカンヌコラムも再開です。

さていきなり余談ですが、
先々週に、電通北海道さんに呼ばれて、講演をしてきました。

「地域の仕事でも海外賞を獲れる」みたいなことを語ってほしい、
とのご依頼でした。
「海外賞の常連でもないのにそんなこと・・・」、と思いつつ、
前の会社を辞めてからの6年間、
今までコツコツやってきたことをかなり詳細に伝え、
結局、いきなり幸運はやって来ない、目の前の仕事をちょっとづつ、
心地よいカタチにしていった先に突き抜けたものをつくるチャンスはあり、
海外賞もきっとあるのでは、というお話をしてきました。

他にも九州の大学で非常勤講師をやっていて、
集中講義の授業を持っている関係で先月からその準備に追われ、
お盆もその講義で休むことができませんでしたが、
ようやく気持ちも落ち着いてきたところでのリスタートです。

閑話休題。

カンヌ終了から二カ月が過ぎました。
さて、今回は海外賞におけるグラフィックのお話。
「プレス」と「デザイン」についてです。

といっても、僕らが口にするグラフィックという概念から、
デザインなどは既にはみだしているのですが、便宜上こう呼んでおきます。

○プレス

ひとことで言えば「とんち」です。
「?・・・!」と言ってもいいかもしれません。

とくに初めて海外賞をみた若者は必ず、
「読広、朝広みたいっすねー」と言います。
エージェンシー名ではありません、公募の新聞広告賞のことですね。

ちなみに、二年前から僕は読売広告大賞のほうの、
審査員もやらせて頂いております。
その経験からいっても、おっしゃるとおり。

謎かけのようなビジュアルがあり、タグラインで落す。
フィルムでもこの手法は後述しますが、カンヌの伝統芸の一つです。

このカテゴリーは、十年前とまったく印象が変わりません。
コミュニケーションの変容にグラつくことなく、
とんちコミュ二ケーションを貫いています。
ある意味立派です。

心が動いて会場で、写真を撮ったものをいくつか紹介しますと、

 ・イヤホン。世界がこう見えてしまうくらいの性能

 ・整形外科?なかなか辛辣な表現です。

 ・虐待を受けた人は、子どもにもしてしまう。シンプルで強い構図

 ・アムネスティも定番。安定した強さ。

 ・年収の差を視覚化

 ・GPはベネトン。「GPに選ばれる理由」をきちんとつくってあります。

・・・といった感じ。ベネトンは、ずるいですよね、いい意味で。

しかし、
ぶっちゃけ、日本でこういう文法でグラフィックをつくりたいお客さんが
どれだけいるのか?考え込まざるをえません。

かつて、海外を視察したADが、
「フィルムより、グラフィックのほうが狙える気がする」
と言っているの何度か目にしましたが、いっこうに日本のプレゼンスは
上がっていないのはなぜでしょうか。むむ。

○デザイン

さて、けっこう多くの人が「プレス」と「デザイン」の違いってなに?
と思われているかもしれません。

応募項目を見ると「デザインを中心に評価する」とわかったような、
わからないような・・・。

ひと言でいうと、デザインは「何でもアリ」という感じです。

ポスターもあれば、プロダクトもあれば、SPツールみたいなものも
入賞しています。
ここらへんは、ダイレクトやプロモと被っていたりします。
評価軸は、グラつかずに一定に出来るのだろうか、
とちょっと思ってみたり。

今年のこのカテはもう、
電通の八木義博さんのためのものといって構わないでしょう。

ゴールド2、シルバー1、ブロンズ1と、大漁旗が背中に見えそうでした。
アドフェストがヤギフェストであったように、ヤギライオンズです。

というわけで八木ギャラリーをどうぞ。(八木さん、勝手にすいません)

 ・行くぜ、東北。

 ・TOKYO ADFEST 2011

 ・MENICON FLAT PACK

 ・TOKYO D&AD 2011

グランプリは、ドイツのこちら。展示の段階で僕もこれは凄いと思いました。
太陽光で内容が浮かび上がる本です。

 ・THE SOLAR ANNUAL REPORT 2011

プレスのグラつかない古典っぷりと、
デザインの異種格闘技感にグラグラしつつ、
カンヌの夜はまたもふけていくのでした。


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