直川隆久 2015年8月9日

1508naokawa

さらだぎらい

      ストーリー 直川隆久
         出演 原金太郎

ほら。特にオシャレでも下品でもないイタリアンの店の
パスタランチなんかで、
ちまっとしたサラダが出るでしょう。
レタスが何枚か、ひらひらっとのせてあって、
出来合いのドレッシングがかけてある。
あと、喫茶店のモーニングなんかでも、
キャベツの千切りと
トマト一切れの上にピンク色のドレッシングがかけてあるやつが、
ちまっと小皿ででてくる。
だいたい冷蔵庫に入れすぎてて、野菜がぐたっとしてて。

ああいうサラダをもさもさ食いながらね、
毎度釈然としない思いをするんですよ。
ほんとにこれ要るのかしらん?ってさ。

「あのちまっとしたサラダがないと飯食った気がしないんだ!」って人
いるかい。いないと思うよ。
別にうまいわけでもなし、別に腹がふくれるわけでもなし、
別に栄養も豊富なわけじゃなし。
ね?店のほうだって、「このサラダで客を呼ぼう」って意気込みが
別にあるわけじゃなしね。もう「別に」だけでできてる食い物ですよ。

近いのはあれだな。
まったく手書きの文字のない年賀状、みたいな感じだよね。
送る方も義務感だけで送ってて、もらう方も嬉しくない、みたいな。
要するに、店の言い訳に−−−−「品数だしてますから」って言い訳に
つきあわされてんだ。数合わせですよ。
客を馬鹿にしてるよ。
誰かがいつかどこかではっきり言わなきゃいけないと思うよ。
サラダ撲滅運動を起こしてくれるNPOがあったら、寄付してもいいよ。
1000円くらい。

まあでもね、俺も大人ですから。
たとえそんなサラダであっても、それでいくばくか経済が回るわけだから、
まぁよしとしようかと。
で考えたわけ。結局形式なんだからさ、
ほんとのサラダである必要ないんじゃないのと。
たとえばさ、サラダの絵を描いた紙をさ、
いや、なんなら「サラダ」って字だけでもいいよ。
ウェイターは持ってきてさ。客はそれ見てさ、
こう、んーーって睨んで、はい、ごちそうさま、つって食べたことにしとくと。で、まあ、お代はいつも通りに払うと。
もう、そういうことでいいんじゃないかね、サラダについてはね。
そっちのがエコでしょ。エコ。

ていうね、こういう話をいつも楽屋で若い連中にするんですけどね。
きょとんとされて終わりだね。
どうでもいいことでウダウダ言いやがって爺ぃ、って顔してるね。
あんたらもわからないでしょ。…どこの中学の新聞部だって?
ああ〜…いや、知らない。
こんな話で記事になるかい。
なんねえよね。はははは。

おや、出囃子が鳴っちゃったよ。
この話になるとつい夢中になっちまうんだよな。
おい、ちょいと。ネタ帳見しておくれ…ん。
ま、いいや。どうせ客は俺の後の真打目当てなんだから。

数合わせ、数合わせ。
はい、じゃ、行ってまいります。

出演者情報:原金太郎 03-3460-5858 ダックスープ所属

 


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