「映画禁止法」
突如、映画禁止法なるものが出た。
正確には、「映画等私的映像作品の上映及び鑑賞を禁ずる法律」
と言うらしいが長ったらしいので、
みんな映画禁止法と呼んでいる。
じつは、いまの総理大臣が大の映画嫌いらしい。
「キューブリックはね」とか
「テレンス・マリックってさ」とかの知識の話から、
「あのシーンどう解釈する?」みたいな、
映画に詳しくない人の人権を1ミリも考慮しない排他的な会話に
ほとほと嫌気がさしたらしい。
某外国の大統領に大の映画好きがいて、
黒澤映画すら見たことのなかったいまの総理はたいそう恥をかいたそうだ。
それが最後の引き金になった。
自分の国の有名監督くらい押さえておけよ!と言いたくもなるのだけど。
まあいい。
とにかく映画館で観ることも、上映することも、
家でDVDや配信で観ることも禁止になった。
ドラマばっかりで全然映画なんて観なかったくせに、
いざ禁止ってなると観たくてしょうがない。
友人にそう話したらまったく同じことを言ってて、
それなら観に行こう!ってことになった。
こっそり上映している映画館があるらしい。
闇上映ってヤツだ。人間は禁止されるほど抜け道をつくる。
禁酒法なんかもそうだったよな。
その闇上映は横浜のある倉庫の中で行われた。
体育館までは大きくないものの、まあまあ大きい倉庫で、
パイプ椅子がところ狭しと並べられていた。
どこから聞いたのか結構観客もいて、
僕と友人は並んで座ることができなかった。
ポップコーンやコーラまで売っていて、
とても禁止令下の上映とは思えない雰囲気だった。
上映作品は「華氏451」という1966年のイギリス映画だった。
それは本の所持や読書を禁じる架空の社会を描いたもので、
まさにいまの映画禁止令の世の中と同じだった。
ああ、そうそう俺たちも禁じられたものを見てるんだな、
なんて思っていたら、エンドロールのときに後方がざわざわしてきた。
警察が踏み込んできたのだ。この闇上映の情報が漏れていたわけだ。
だけど、なぜか僕らは全員逮捕されずに帰してもらえた。なぜか?
その闇上映に総理大臣がこっそり来ていたらしい。
それも例の映画好きの大統領に連れられて。
それを見つけた警察がみんなを捕まえないことで
総理と大統領を守ったというわけ。
命拾いして助かったんだけど、
同時に法律ってなんなんだろうなって思ってしまった。
という映画のシナリオを僕はいま執筆中だけど、この番組をお聞きの皆さん、
観たいと思いますかね。